南海トラフ地震「前兆」現象への対応

  • 事業継続 / BCP

2019/2/4

政府・中央防災会議は2018年12月25日、作業部会「南海トラフ沿いの異常な現象への防災対応検討ワーキンググループ」の報告書を防災担当大臣へ提出、ホームページで公表しました。本報告は、企業の事業継続計画(BCP)や地震時対応にも影響を及ぼすものであることから、その概要をお知らせします。

※1 中央防災会議「南海トラフ沿いの異常な現象への防災対応検討ワーキンググループ」
http://www.bousai.go.jp/jishin/nankai/taio_wg/taio_wg_02.html

ご承知のとおり、南海トラフ地震については、大規模地震対策特別措置法 (1978年制定)以来の運用が、近年の見直しにより2017年から大幅に変更されています。従来、異常事象の察知に伴い「警戒宣言」を含む地震の予測情報が発表され、法律や指示に基づく対応を公共機関など各主体が行うこととなっていましたが、見直し以降、「地震が発生する可能性が高い」といった不確実性を伴う「前兆」情報=「南海トラフ地震に関する情報(臨時)」のみが発表されることとなり、自治体や企業などの各主体は、地震の発生可能性に加え、それぞれが置かれた状況(脆弱性や社会的重要性など)に基づいて自らの判断で対応することが求められるようになりました。

今回のワーキンググループでは、これまでの検討結果を受け、南海トラフ沿いで観測される可能性が高く、かつ大規模地震につながる可能性がある典型的なケースとして、以下の3つを対象に防災対応の方向性が検討されました。

1.半割れケース
例えば、南海トラフ想定震源域の東側(東海地域)のみで大規模地震 (マグニチュード(以下「M」)8.0以上)が発生した場合など。この場合、東側の地震と連動して、東南海・南海地域で大規模地震が発生する可能性が高いとみられます。

2.一部割れケース
南海トラフ沿いでM7クラスの地震が発生した場合。地震が発生した地域以外の地域で、同程度またはさらに大きな地震が発生する可能性があります。

3.ゆっくりすべりケース
南海トラフの想定震源域内におけるプレート境界面での「ゆっくりすべり」 (※2)現象などがみられた場合。
※2 「ゆっくりすべり」は、スロースリップ(slow slip)とも呼ばれ、普通の地震によるプレートのすべりよりもはるかに遅い速度で発生する滑り現象のことです。

ワーキンググループでは、地震発生の可能性、社会の状況に加え、避難等の防災対応に対する受忍の限度等を踏まえ、防災対応の方向性を検討しました。結果として、地震発生の可能性がより高いと評価される「半割れケース」では、「最も警戒する期間:1週間」に加え「一部割れケースと同等の防災対応をする期間:1週間」、つまり計2週間、住民避難や被害防止措置、危険回避措置を行うことが、方向性として示されました。

ワーキンググループ報告書では、それぞれのケースで企業を含む様々な主体が、「混乱なく適切に防災対応を取るためには、国、都府県、市町村、企業等が取るべき防災対応の計画をあらかじめ定めることが必要」としています。具体的にはこれから速やかに、国が上記方向性に基づく「住民や企業等の防災対応の検討を促すためのガイドライン(仮称)」を提示し、これをもとに地方公共団体や企業等に具体的な防災対応の検討を促すことが重要としています。(その後、2019年1月8日の閣議後記者会見において、防災担当大臣から、自治体や企業の南海トラフ地震への防災対応について「2018年度内にガイドライン案を策定し、2020年度のしかるべき時期に本格運用する」と、発表されました。) 

企業としては、どのようなケースが発生しても混乱が生じないよう、ワーキンググループ報告書や今後公表されるガイドライン等を参考に、自社としての具体的な対応を順次検討することが求められます。

執筆コンサルタントプロフィール

深津 嘉成
ビジネスリスク本部 マネージャー 主席研究員

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