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ホーム > 企業リスク情報 > タリスマン > 「韓国における知的財産権の保護と権利行使」

  ■  TALISMAN「韓国における知的財産権の保護と権利行使」全文

 

 はじめに

[ 1 ]  韓国の知的財産権制度及び手続き
[ 2 ]  韓国における知的財産権の権利保全
[ 3 ]  韓国における侵害対策
[ 4 ]  知的財産権侵害事件における日本企業の対応例
[ 5 ]  国境(税関)での取締り

 


はじめに

知的財産権シリーズの第8回となる本号は、前号(1995年7月発行)で取り上げた中国に続き、日本企業が商標権や著作権を中心とする知的財産権の侵害対策に関心の高い韓国における知的財産権保護の問題を取り上げました。

日本企業の韓国での知的財産権侵害の被害例としては、キャラクターのついた玩具やケトルやリュックサックといった我々の日常身の回りにある商品の商標権侵害や、漫画などの著作物の著作権侵害が目につきます。

世界的な知的財産権保護強化の潮流の中で、米国を始めとする外国からの批判を受け、また、1995年1月に発足したWTO(世界貿易機関)へ引き継がれたGATT TRIP協定(知的財産権の貿易関連側面)を受けて、韓国もまた、知的財産権関連法規の整備を急ピッチで進めています。著作権法は、1995年12月6日付で、工業所有権4法については、1995年12月29日付で各改正法が公布され、1996年7月1日(但し、改正商標法は1996年1月1日)から施行されることになりました。

この改正により、例えば、特許に関しては、早期公開制度が導入されることになりましたし、商標に関しては”色彩”も商標の構成要素となるように保護の対象が広がりました。意匠については、出願人の申請により出願公開をすることができ、公開された出願意匠が侵害された場合、登録後に補償金を請求することが出来るように改められました。また、著作権については、万国著作権条約発行日(1987年10月1日)より前に発行された外国人の著作物についても遡及して保護することを明文化し、韓国語などに翻訳された二次的著作物について、2000年以降、原著作者は補償を請求することができるようになりました。

本稿では、日本企業をはじめとする外国企業の韓国における知的財産権保護に実務的にも長年関わっている韓国の中央国際法律特許事務所の李丙昊所長、崔達龍副所長が、コンピューター・プログラム保護法と半導体集積回路の配置設計に関する法律なども含め、最新の韓国の知的財産権保護制度の内容を紹介すると共に、日本企業が韓国でいかに自らの知的財産権を保全し、又、権利行使していけばいいのかを、ケースをいくつか紹介しながら、具体的に解説しています。

韓国において、自社の知的財産をいかに守るかを考える際、本稿は一つのガイドとしてお役立てて頂けるものと考えます。

 


1. 韓国の知的財産権制度及び手続き

世界的な知的財産権保護強化の動きの中で、韓国も急速な変化をみせています。
特許を始めとする工業所有権4法(特許法・実用新案法・商標法・意匠法)は、これまでも大幅な改正を重ね、最近では、1995年12月29日付で改正法が公布(1996年7月1日付施行。但し、改正商標法は1996年1月1日施行)されました。4法以外にも、営業秘密を保護する不正競争防止法、著作権法、コンピュータ・プログラム保護法、半導体集積回路の配置設計に関する法律等知的財産権関連の法律が整備、施行されており、政府は侵害行為に対して厳しい措置をとっています。更に、1998年から特許審判院及び特許法院が新たに設置されることになっており、工業所有権の審判手続きにおいても大きな変化が生じることになるでしょう。
以下、各法制度及びその手続きを簡単に説明していきます。

1. 特許法

韓国の特許制度の歴史は、1908年「韓国特許令」に始まります。現行特許法(法律第4594号)は、1961年に改正された法律第950号が基礎となっていますが、1993年12月10日改正されたものです。今後は、1996年7月1日から施行される改正特許法(以下「改正特許法」といいます)、及び1998年3月1日から設置される特許審判院等と関連して特許法(1995年1月5日公布、法律第4892号)の内容についても知る必要が出てきます。勿論、韓国は、パリ条約(加入:1980年5月4日)及びPCT(特許協力条約:1984年8月10日加入)等の国際条約に加入しています。従って、パリ条約による優先権を主張することができます。

現行の韓国特許制度は日本の制度と類似する点が多く、最初に出願した者に特許を付与する先願主義、公開及び公告制度、審査請求制度、審査前置制度等を採用しています。特許出願が行われると、出願日(優先権主張時には優先日)から1年6ケ月後に公開公報に掲載されます。その後、この出願が審査され公告されると、出願公開から公告までの期間その発明を実施した他人に対して、補償金を請求することができます。改正特許法によって、出願日(優先日)から1年6ケ月以前であっても、公開を申請することができる早期公開制度が導入されます。特許の可否審査は出願日(PCTによる出願は国際出願日)から5年以内に審査請求された件に限って審査着手され、出願日とは関係なく審査請求順によって審査がなされます。

審査で拒絶する理由がなければ、出願公告され、2ケ月にわたり異議申立てを受けることになります。この期間が経過すると、登録の為の査定を受け、3年間の登録料を納付すれば特許が受けられます。

権利期間は、現行法上、公告日より15年、但し出願日より20年以内となっていますが、改正特許法によって、出願日より20年となりますが、改正施行日(1996.7.1)時点で既に出願されているもの、又は、存続中の特許権の権利期間はどちらか長い方を認めます。

審査過程で拒絶され、その審査に不服の場合には、特許庁の抗告審判所に抗告をし、さらに、大法院に上告をすることができます。しかし、1998年からは拒絶された場合、特許庁の特許審判院に不服を申立てることができ、その後、高等法院に該当する特許法院に、最終的には、大法院に上告をすることができます。

2. 実用新案法

実用新案法は、大部分、特許法を準用しています。主な相異点は、審査請求できる 期間が出願日より3年以内であり、権利期間は、現行法上、公告日から10年(但し、出願日から15年以内)となっている点です。しかし、1996年7月1日から施行される改正法では権利期間は出願日より15年となりますが、特許のように、改正法施行日時点で既に出願されているもの、又は存続中の権利の権利期間は、どちらか長い方を認めます。

また、技術水準の点で、特許と実用新案の差は大きなものとして捉えられています。即ち、特許は高度な技術を要求されるために、もし特許で出願して拒絶されると実用新案に変更して登録を受ける場合が多いのです。

3. 商標法

韓国の商標制度は、1949年11月28日制定され、その後、数回の改正を経た現在の商標法(1995年12月29日改正)に基きます。韓国商標法は、登録主義、先願主義を採用しているので、商標に対する使用事実の有無を問わず、一番先に出願した者に登録が与えられ、権利は登録によって発生します(第8条、第41条)。商標として登録されるためには、第1に、商標法に定める商標の概念に該当すること、第2に、商標の商品表示としての識別性が一般的な適格性を備えていること、第3に、商標法に定める不登録事由に該当しないことの各条件を満たしていなければなりません。

第1の商標とは、韓国商標法上「商品を生産加工証明または販売することを業とする者が、自己の業務に関連した商品を他人の商品と識別されるようにするため使用する記号、文字、図形またはこれらを結合したもの(第2条第1項1号)」をいいます。

1996年1月1日からは“色彩”も商標の構成要素とすることができるように同条項が改正され、“色彩商標”の保護も可能になりました。第2の商標としての一般的な適格性を備えていない標章とは、当該商品の普通名称と慣用標章、記述的標章、有名な地理的名称、簡単でありふれた標章、または、自社商品と他社商品との識別力がない標章をいいます(第6条)。

第3の商標法に定める不登録事由としては、国旗等と同一または類似する商標、国家との関係を虚偽に表示したり、国家を侮辱したりする内容の商標、著名な業務標章と同一または類似する商標、公序良俗に反する商標、博覧会の賞と同一または類似する商標、著名人の名前等を含む商標、他人の先登録商標と同一、類似する商標、他人の周知著名商標と同一、または類似する商標、または需要者を欺瞞するか商品の品質の誤認を起こすような恐れがある商標をいいます(第7条)。

商標登録を受けるためには、商標登録出願書を特許庁に提出しなければなりません。韓国は工業所有権に関するパリ条約の加盟国であるため、最初の国での出願日より6ケ月間、優先権を主張することができます。優先権主張に必要な書類は、韓国での出願日より3ケ月以内に提出しなければなりません。また、一出願多区分制を採っていないので、各商品区分毎に夫々出願しなければなりません。韓国は未だ国際分類を採用していませんが、1998年頃国際分類を公式採用するものと予想されています。

また、サービスマークの登録については、韓国商標制度の初期から採用してきています。審査において、審査官は登録の拒絶理由を発見できなければ商標公報に公告して、これに対して誰でも公告日から30日以内に異議申立てをすることができます。異議申立てがないとか、異議申立てがあってもその根拠が不充分と判断されれば、登録の為に必要な査定の上、出願人が登録料を納付すれば登録され、商標権が発生します。出願から登録まで約1年かかります。

商標権の権利期間は、登録日より10年で、更新出願によってその権利期間を10年毎に延長することができます。
商標権の効力は、同一商標・同一商品についての独占権、類似商標・類似商品についての排他権を内容にしており(第50条、第66条)、商標権者は、侵害差止請求権、損害賠償請求権、信用回復請求権等を行使できますし(第65条乃至第69条)、商標権を侵害した者は、5年以下の懲役または2,000万ウォン(1995年12月末現在の為替レートで100ウォンは約13円。従って2,000万ウォンは約260万円)以下の罰金に処せられます(第93条)。

4. 意匠法

韓国の意匠制度は、1961年12月31日に制定され、数次の改正を経て、1993年12月10日に改正された意匠法(法律第4595号)に基いていますが、1996年7月1日から施行される改正意匠法が1995年12月29日付で公布されました。

意匠権は、その登録によって権利が発生し、他の工業所有権制度と同様に先願主義に基き、審査主義及び登録主義を採用しています。意匠登録を受けるためには、先ず登録を受けようとする意匠が、意匠法上の“意匠”の概念に該当し、意匠としての一般的登録要件を備え、更に意匠の不登録事由に該当しないという3つの要件を満たしていなければなりません。

第1に、意匠法上“意匠”というのは「物品の形状、模様、色彩またはこれらを結合したもので、視覚を通じて美感を起こさせるもの」をいいます(第2条)。

第2に、意匠としての一般的登録要件は、工業上利用可能なもの(即ち、量産可能なもの)で、新規性があり、かつ創作性のあるものという3つの要件を全て備えなければなりません。特に、新規性の要件に関連しては、国際公知主義を採択しているので、意匠登録出願前に国内または国外で公知されたか、公然と実施された意匠、意匠登録出願前に国内または国外で頒布された刊行物に記載された意匠、またはこれら意匠に類似する意匠は、登録を受けることができないことになります(第5条)。

第3に、意匠の不登録事由として、国旗、国章、軍旗、勲章等と同一または類似した意匠、公序良俗を乱す恐れのある意匠、または他人の業務に関わりのある物品と混同をもたらす恐れのある意匠は、登録を受けることができません(第6条)。

意匠登録を受けるためには、その出願書を特許庁に提出しなければなりません。韓国は、工業所有権に関するパリ条約の加盟国であるため,外国での最初の出願日より6ケ月以内に韓国で出願すれば、優先権主張が可能です。優先権主張に必要な書類は,韓国での出願日より3ケ月以内(日本の場合は16カ月以内)に提出しなければなりません。また、物品毎に1つずつ意匠出願をしなくてはなりません。即ち、多数の物品を1つの出願ですませることは認められないのです。審判官が当該意匠出願を審査した結果、拒絶理由を発見できなければ,登録の為の査定をして出願人が登録料を納付すれば、意匠権が発生します。登録前、異議申立てのための公告手順のない点が他の工業所有権制度と異なる点です。但し、新意匠法では、出願人の申請により出願公開をすることができ、公開された出願意匠が侵害された場合、登録後に補償金を請求できるように改められました。

意匠権の権利期間は、登録日から10年です。意匠権の効力として、意匠権者は業として登録意匠、またはこれと類似する意匠を実施する権利を独占します(第41条)。意匠権者は、侵害差止請求権、損害賠償請求権、信用回復請求権等を行使することができ(第62条乃至第66条)、意匠権を侵害した者は5年以下の懲役または2,000万ウォン以下の罰金に処せられます(第82条)。

5. 不正競争防止法

韓国の不正競争防止制度は、民法、商法、刑法、特許法、実用新案法、商標法、意匠法等色々な法律によっても規律されていますが、独立した法律としては1961年に制定され、その後2回の改正を経て、1991年12月31日に改正された不正競争防止法(法律第4478号)によって規律されます。
韓国の不正競争防止法は、不正競争行為を

(1)商品の出処を混同させる行為
(2)営業主体を混同させる行為
(3)商品の原産地を誤認させる行為
(4)商品の生産・加工地を誤認させる行為
(5)商品の詐称及び質量を誤認させる行為

の5つに限定して規定していますが(第2条第11号)、特に関心を引くのは1991年12月31日改正当時、営業秘密を保護する規定を新設したという点です(第2条第1乃至3号)。

不正競争行為によって、営業上の利益が侵害されるとか、侵害される恐れがある者は、不正競争行為の差止請求権を行使することができます。不正競争行為をした者に故意・過失が認められる場合には、営業秘密の保有者は損害賠償請求権と信用回復請求権を行使することができます。また、営業秘密の侵害行為に対して営業秘密侵害の差止請求権、損害賠償請求権、信用回復請求権を行使することができます(第4乃至6条、第10乃至12条)。
一方、不正競争行為をした者及び営業秘密を侵害した者は、3年以下の懲役か3,000万ウォン以下の罰金に処せられます(第18条)。

6. 著作権法

韓国の著作権保護制度は、1957年に制定され、その後数回の改正を経た現行の著作権法(1994年3月24日改正、法律第4746号)によって規律されてきました。しかし、この改正法(法律5015号)が、1995年12月6日付で公布され、工業所有権4法と同様、1996年7月1日から施行される予定になっています。韓国著作権法は、著作物に関して語文、音楽、演劇、美術、建築、写真、映像、図形及びコンピュータ・プログラム著作物を例示していますが、コンピュータ・プログラム著作物は、コンピュータ・プログラム保護法により保護されます。そして著作物の保護範囲と関連して、原著作物だけでなく、原著作物を翻訳、編曲、変形、脚色、映像製作等の方法で作成した創作物も二次的著作物として保護され、編集著作物の場合も、素材の選択または配列の創作性があるものであれば、著作物として保護されます(第5条、第6条)。

一方、韓国は、万国著作権条約(UCC)に1957年7月1日に加入して、1987年10月1日以降発行された外国人の著作物は、韓国国民の著作物と同等の保護をしていました。即ち、逆にUCC発効日(1987年10月1日)より前に発行されたものは保護されないという但書条項があったのです。しかし、改正著作権法により、この但書条項が削除され、遡及保護されるようになります。
他方で、改正法公布以前に複製されていたものは、1996年末までは継続して配布できることとしました。また、この改正法の施行前の原著作物に対する二次的著作物(韓国語に翻訳されたもの等)については、継続利用を認めるものの、原著作者は2000年以降、補償を請求することができるように規定しています。

著作権は、他の知的財産権とは異なり、創作と同時に権利が発生し、登録は権利発生の要件ではありません。但し、著作権の譲渡または処分制限と著作権を目的にする質権の設定、移転、変更、消滅または処分制限に関する事項は、文化体育部に登録しなければ第三者に対抗できません(第52条)。

著作権を侵害された場合の救済策としては、他の知的財産権の場合と同様に、著作権侵害差止等請求権、損害賠償請求権、名誉回復措置請求権が設定されていますが(第91乃至97条)、著作権に関する紛争を調停するための機関として著作権審議調停委員会が設置、運営されています(第81条)。一方、著作権を侵害した者は、3年以下の懲役または3,000万ウォン以下の罰金に処せられるか、これを併科されます(第98条)。

7. コンピュータ・プログラム保護法

韓国でのコンピュータ・プログラム保護法は、1986年12月31日に制定され、その後数回の改正を経て、最近では、1995年12月6日に改正されました(法律第4996号)。コンピュータ・プログラム保護法上、著作物として保護を受けることのできるコンピュータ・プログラムとは、

 

(1)情報処理能力を有する装置を機能させるもの
(2)そのプログラムにより特定した結果を得ることのできるもの
(3)コンピュータ内で直接間接に使用される一連の指示、命令
(4)プログラムで表現されたものの各要件を満たすもの

とされています。これらの要件は、コンピュータ産業が発達した米国、日本、台湾等における法律上の保護対象範囲と殆ど同じものとみることができます(第2条)。
外国人のコンピュータ・プログラム著作物については、他の著作物と同様に、韓国が加入または締結した条約(UCC締結日:1987年7月1日)によって保護してきましたが、改正コンピュ−タ・プログラム保護法によって、それ以前に創作されたものに対しても韓国が加入したWTO(世界貿易機関)におけるTRIP(知的財産権の貿易関連側面)協定が定めるところによって保護されることになりました。
更に、コンピュータ・プログラムの著作権は、他の著作権と同様、創作と同時に発生しますが、コンピュータ・プログラム著作権の移転または処分制限とプログラム著作権を目的にする質権の設定、移転、変更、消滅または処分制限は、情報通信部に登録することで初めて第三者に対抗することができます(第24条)。そして、その登録業務は、韓国コンピュータ・プログラム保護会に移管されています。
コンピュータ・プログラム著作権者がその権利を侵害された場合、侵害の差止等請求権、損害賠償請求権が認定され、紛争を調停する機関としてプログラム審議調停委員会が設けられています(第25条、第27条、第29条)。

プログラムを侵害した者には、3年以下の懲役または3,000万ウォン以下の罰金に処するか併科できるようにしています(第34条)。

8. 半導体集積回路の配置設計に関する法律

半導体集積回路の配置設計に関する創作者の権利は、1992年12月8日に制定、1994年12月16日に改正され、1995年7月1日から施行されている半導体集積回路の配置設計に関する法律によって保護されています。
半導体集積回路の配置設計に関する法律上、保護対象になる配置設計とは、1.半導体集積回路を製造するためのもので、2.回路素子及びそれらを連結する導線を平面的または立体的に配置した設計であることを要します(第2条)。このような配置設計に対する権利に創作性があるべきことは勿論ですが、著作権とは異なり、登録をしなければ権利が発生しないものとしています(第6条)。配置設計権者は、専用利用権または通常利用権を設定することができます(第11条、第12条)。

外国人の配置設計に対する権利保護は、韓国が加入または締結した条約によって保護を受けることができますが、同法の制限を受け、同法施行日である1993年9月1日以前に創作されたものには適用されません(第3条)。

配置設計権は、通商産業部に登録することで発生しますが、この登録業務は、特許庁に移管されています。配置設計権の移転または処分の制限と専用利用権、通常利用権、そしてこれらの権利を目的にする質権の設定、移転、変更、消滅または処分の制限は、登録を第三者への対抗要件としています(第23条)。

配置設計権者または専用利用権者がその権利を侵害された場合、侵害の差止等請求権、侵害賠償請求権を行使することができ(第35、36条)、紛争を調停する機関として、配置設計審議調停委員会が設けられています(第25条)。

配置設計権または専用利用権を侵害した者は、3年以下の懲役または1,000万ウォン以下の罰金に処せられます(第45条)。 韓国における知的財産権の権利保全 ある権利を獲得した後に、その権利をきちんと維持・管理することは非常に重要です。こうした管理は権利自体を有効に維持するために必要であるということはいうまでもありませんが、これによって、他人の侵害を予防する効果もあります。

 


2. 韓国における知的財産権の権利保全

1. 特許権・実用新案権

特許権(または実用新案権)を取得した後に、まずしなければならないことは、年度金納付です。初めて特許(または実用新案登録)を付与されたときには、既に3年次分までの年度金を納付した状態であるので、4年次分から年度金を納付しなければなりません。その場合、公告日から数えて前の年度のうちに1年分ずつ納付するか、または、纏めて一括納付することになります。

年度金が継続納付されると、一旦、権利は維持された形となりますが、他人の審判請求によって権利が無効にされることがあります。このような審判に適切に対応するために、外国人の場合、最初の3年次分の納付時に、特許管理人を選任しておくのが望ましいでしょう。

なぜならば、他人から審判が請求された場合、特許管理人が選任されていればその特許管理人、即ち韓国代理人に審判の副本書類が送付され、外国権利者に確実に伝達されるため、それによって適切な措置を取ることができます。しかし、選任されていない場合は、審判の副本書類は権利者に直接送付されるようになり、送達の錯誤、または言語理解の不足等色々と問題が発生し、答弁書提出の機会を喪失する場合があります。上記のような理由で、全ての権利について管理人を選任することが望ましいのですが、費用節減を考え、最低限、侵害の恐れがある権利、技術提供する権利については、必ず選任しておくと良いでしょう。

権利の活用において、専用実施権及び通常実施権を付与することには、これによる実施料(ライセンス料)を受けるという意味もありますが、実施権者にその権利を管理させ、侵害者を迅速に発見して侵害を根絶させるのに大きく役立つでしょう。

更に、侵害を未然に防止するため、商品またはその包装に特許権(または実用新案権)表示することも重要です。

2. 商標権

商標権は、更新によって10年毎に10年間継続延長することができます。更新出願は権利期間満了前1年以内ならいつでもすることができますし、その期間が満了した後でも6ケ月の猶予期間内に出願すればよいことになっています。但し、その場合には、若干の追納料を納めなくてはなりません。更新出願のため当該登録商標を使用していたことを示す証拠は提出する必要がありません。
商標不使用と関連して取消審判制度に留意しなければなりません。即ち、商標権者または使用権者そのどちらも登録商標をその指定商品に継続して3年以上使用していなければ、当該登録商標は、利害関係人の取消審判請求によって取消されることがあります。更に韓国商標法は、指定商品一部取消制度を採用しています。それで、重要な商標の場合、3年毎に使用証拠を確保しておく必要があるといえます。

更に、商標権者が専用使用権または通常使用権を問わず、その使用権登録をしないで自己の登録商標を他人に6ケ月以上使用させるようにした場合には、当該登録商標は利害関係人の取消審判請求によって取消されうるので、商標使用権登録の重要性はいくら強調しても過ぎるものでないといえます。

商標権者は商標の普通名称化または慣用標章化等の防止に努力しなければならないでしょう。一旦、商標として登録がされたとしても、当該標章が多くの人々が自由に使用することで普通名称化、慣用標章化、またはそのものの性質を表示するような標章になってしまえば、当該登録商標の無効事由になり、更新登録が許容されないので、登録商標の管理に細心な注意が求められます。

商標権者または専用使用権者が商標を使用するときには、登録商標であることを表示することをお勧めします。そうしておれば、当該商標権または専用使用権を侵害した者は、その侵害行為に対してその商標が既に登録された事実を知っていた、即ち故意があったものと推定されることになります。

3. 意匠権

意匠権の登録料は最初の3年分を一時に納付しなければなりませんが、4年目からは毎年1年分ずつ当該権利期間開始日を基準にしてその前年のうちに納付しなければなりません。その納付期間内に納付しなかったときには、その納付期限後でも6ケ月以内ならば納付することができますが、この場合には、当該登録料の2倍に相当する金額を納付しなければなりません。4年目以降の登録料は、何年目というその納付年次によって一定年数分または必要な年数分を一括して納付することもできます。
類似する意匠の侵害に備えて、類似意匠を予め登録しておく制度を活用して、保護を図ることもできます。

4. 不正競争防止法で保護される権利

不正競争防止法による権利保護を受けるため、予め特別に取らなければならない手順はなく、侵害が発生した場合、この法をどういうふうに適用するかがポイントになります。通常、商標権、意匠権等の権利を主張して侵害に対処しますが、これらの権利を獲得していない場合には、一般に不正競争防止法が適用されています。

しかし、この法によって、商品または営業の保護を受けるため留意すべき点は、「その商品及び営業が国内で広く認識されていること」という要件が満たされなければなりません。

「広く認識されていること」ということは、国内で広く認識されることを要しますが、必ずしも韓国全域にわたる必要はなく、当業者の営業活動が及ぶ範囲内であれば充分です。広く認識されているかということを認定する資料には、商標等標識の使用期間、営業の規模、店舗の数とその分布地域、商品の販売数量と販売業者、宣伝広告の種類、方法、頻度及び費用、商品表示とか商品乃至営業に関する第三者の評価等が含まれるので、平素からこのような周知性の認定資料を多く集めておくことが、不正競争防止法による保護を受けるのに役立つでしょう。

一方、1992年12月15日以降、営業秘密に関しても、この法で保護しています。営業秘密の侵害に対する差止請求は、その侵害事実及び侵害行為者を知った日より1年、侵害行為があった日から3年間行使しなければ、時効で消滅するようになる点に留意しなければなりません。侵害行為に対して、一般民事上の差止請求及び損害賠償請求が可能ですが、刑事罰を求めるためには、企業の役員または職員といった身分を有する者が不正な利益を得るとか、その企業に損害を加える目的でその企業に特有な営業秘密を第三者に漏洩したという要件が必要です。

5. 著作権

著作権は、著作人格権と著作財産権とに分けられます。著作人格権には、公表権、氏名表示権、同一性保持権等がありますが、いずれも著作権者個人に専属的なもので他人に譲渡することはできません。著作財産権は、複製権、公演権、放送権、展示権、頒布権、二次的著作物の作成権等を含み、著作者は、その権利行使を通じて経済的対価を得ることができます。

著作財産権は、通常著作者の生存している間とその死後50年間存続します。但し、著作者の死後40年以降、50年以前に公表された著作物の著作財産権は公表されたときから10年間存続します。無名または広くは知られていない異名が表示された著作物、団体名の著作物または映像著作物の著作財産権は公表されたときより50年間存続します。尚、団体名の著作物及び映像著作物は創作したときから10年以内に公表されない場合には、創作されたときより50年間存続します。

著作権法は、著作権の発生に何ら行動を要しない無方式主義を取っていますが、著作者の利益保護のため登録制度を認め、実名登録、最初の発行日または公表日の登録、著作財産権の変更登録等が可能です。すべて文化体育部に5,000ウォン程度の地方税印紙を購入することで簡単に登録することができ、登録に要する期間は5日程度です。著作者が実名登録をすると著作者と推定され、最初発行公表審議登録として登録された年月日に最初の発行または公表があったものと推定されます(第51条)。即ち、実名登録あるいは最初の発行日、公表日の登録をしておけば、著作権侵害等の問題が発生した場合、別に証拠の提示なくして登録証を提示することだけで上記の事実等が推定されるというメリットが得られます。従って、登録手続を済ませておくのが有利です。しかし、証拠として著作物の創作事実または最初の発行日または公表日等を明らかにすることができる場合には、必ずしも登録する必要はありません。

著作財産権者が他人に著作物の利用を許諾する場合がありますが、通常その許諾によって著作物を利用できる権利は、著作財産権者の同意なくして第三者にこれを譲渡することはできません。

その他、出版権設定契約が締結された場合には、出版権は、特約がなければ最初出版した日から3年間存続し、出版権の設定を受けた者は特約のない限り出版権の目的である著作物を複製するため必要な原稿等を受けた日より9ケ月以内にこれを出版しなければならず、履行しなかった場合、出版権者は6ケ月の期間を定めてその履行を催告して、それでも履行しない場合には出版権の消滅を通告することができます。

6. コンピュータ・プログラム保護法

コンピュータ・プログラム保護法は、著作権法の特別法の性格を有するので、コンピュータ・プログラムの保護は、著作物に対する権利保護の内容と殆ど同じです。即ち、プログラムの著作権もプログラムが創作されたときに発生し、その権利期間は50年です。又、プログラム著作権は、プログラム著作者人格権とプログラム著作財産権とに分けられます。但し、プログラム著作財産権で特別な点は、プログラム使用者が複製物の滅失毀損または変質等に備えて、当該プログラムを複製する、所謂予備のバックアップをとることを認めるという点です。プログラムの保護においても登録制度は存在します。即ち、プログラム著作者はプログラム創作後1年以内に、

 

(1)プログラムの名称またはタイトル
(2)プログラム著作者の国籍、実名及び所在地
(3)プログラムの創作年月日
(4)プログラムの概要

を登録することができ、登録されたプログラムは、その登録された年月日に当該プログラムが創作されたものと推定し、他人が登録したプログラム著作権を侵害した者は、その侵害行為において過失があったものと推定される効果が得られます。一方、プログラム著作財産権の変更もまた、これを登録しなければ第三者に対抗することはできません。

7. 半導体集積回路の配置設計に関する法律

半導体集積回路の配置設計についての権利は、著作権、プログラム著作権等とは異なり、登録しなければ半導体集積回路の配置設計に関する法律による保護を受けられません。登録は、商業的利用が行われた日から2年以内にのみ可能です。

配置設計権の権利期間は、設定登録日から10年で、営利目的でその配置設計を最初に利用した日から10年またはその配置設計の創作日から15年を超えることはできません(第7条)。配置設計権の変更に関する事項は、その登録をしないと第三者に対抗できません。一方、登録された配置設計権の権利者、専用利用権者、あるいは通常利用権者は、当該配置設計を利用して製造された半導体集積回路及びその標章等に配置設計の登録表示をすることができるので、そのような登録表示をしておくと良いでしょう。

 


3. 韓国における侵害対策

他の途上国と同様に、韓国でも過去、先進国の知的財産権を侵害する事例が多かったことは否定できません。1980年代中頃に至るまで、侵害者は勿論、一般の国民も、途上国で先進国の技術を模倣して使用することは当然と考え、そのような盗用行為が他人の財産権を侵害する重大な犯罪行為であると認識できなかったのは事実です。

しかし、その後、1988年のソウル・オリンピックの開催、GATTウルグアイラウンド協定の妥結、WTO(世界貿易機関)の発足等を経て、主に先進国から各種通商開放圧力や知的財産権保護の強化要請を受け、韓国政府は、国民に知的財産権侵害禁止を呼びかけると同時に、最近では知的財産権侵害事件に対して継続的に厳重な取締りを行ってきています。例えば、過去3年間韓国政府の侵害取締りの状況は次の通りです。

1. 侵害事実の調査

韓国で知的財産権を保有する日本企業が、在韓国支店、駐在員事務所、ライセンシー(Licensee)またはエージェント(Agent)等から韓国に侵害品が出回っているという情報を入手した場合、侵害者に対する法的措置を取るのに先立って市場調査を通じて侵害物品を押えて、製造者または販売者(輸入者)が誰か、についての情報を入手しなければなりません。そのような調査は、市場調査をした業者に行わせることもできますが、より専門的な特許法律事務所に依頼して行うのが効果的です。

特許法律事務所では事案によって、自ら運営する調査チームを活用して調査をしたり、また専門の信用調査機関を利用することもあります。尚、場合によっては、侵害物品が知的財産権の権利範囲に属するかどうかが曖昧なときもあるので、そのような場合には、特許法律事務所の判断を予め受けてみるとよいでしょう。

2. 証拠物件及び必要情報確保後の対策

侵害物品を証拠として確保し、侵害に該当するという確信があり、侵害物品の販売者に関する人的情報を入手した後には、

 

(1)侵害者に対して警告状を送る方法
(2)捜査当局または関連機関に告訴または救済申請を行う方法
(3)仮処分等民事訴訟手続を行う方法
(4)その他、侵害防止対策等の適切な措置を事案に応じて取らなければなりません。

(1)警告状の発送及び侵害者との交渉

侵害者に対する警告状は、通常権利者が侵害者に対する損害賠償とか刑事罰より侵害行為の差止に重点をおく場合に発送されますが、場合によっては、継続的な侵害行為があった場合、刑事告訴のために侵害者の故意性を証明するための手段(警告状受領以後は故意による侵害行為とみなされるため)、または販売者を通じて製造者に関する情報を獲得するための手段として発送されることもあります。
警告状の内容としては普通、

・権利者及び権利内容の説明

入手した証拠による侵害の内容及び関連法規による処罰可能性の示唆 、要求条件提示(経緯書及び覚書の提出、侵害品の処理方法、製造業者に対する情報開示要求、損害賠償及び謝罪広告の要求等)不履行の場合の速やかな法的強行措置の予告等が含まれます。
一方、このような警告状の発送時留意すべき点としては、

・充分な証拠収集と侵害の事実を確認後、発送すること

侵害者の反撃による権利者の被害を予測して、予め弱点を補強しておくこと(警告状の受取人は自身を防禦するために権利の弱点を探り、無効審判、取消審判または権利範囲確認審判を提起する場合が多いため)

・販売業者に警告状を送ったとき、製造業者に漏洩され、証拠が湮滅される恐れがあるかどうかに関する慎重な判断

等です。製造業者に対する確実な情報があれば、警告状を発送しないで直に捜査機関の協力を得て急襲することが必要でしょう。なぜならば、完璧な証拠確保なしに製造業者に対して警告状を発送するとか、刑事告訴をすると証拠を湮滅する充分な時間を与え、結局、侵害者に対する刑事処罰とか損害賠償に失敗する場合が生ずるためです。

警告状を受けた侵害者は殆どの場合、それに対する反論をするか連絡を取ってきますが、たまには警告状を無視して何の応答もしない場合もあります。侵害業者より連絡がある場合には上記要求条件に関する示談が進められますが、連絡のない場合には次のような法的措置を講じます。

(2)捜査機関への告訴または関連官庁への救済申請

1. 捜査機関への告訴及び認知要求

製造業者に対して充分な証拠収集を完了したか、販売業者が警告状の受領後も警告に従わず、継続的な販売行為を続ける場合には、権利者は、管轄警察署または警察庁に告訴状を提出すればよいのです。日本企業の場合、侵害者に対する告訴は韓国の特許法律事務所に依頼して告訴の代理をさせることをお勧めします。これは韓国内での告訴人陳述等のための捜査機関への代理出席をさせることができるメリットもさることながら、民事上の仮処分または損害賠償訴訟に大きな影響を与える捜査記録またはその処分結果を適切に処理したり、刑事告訴中の侵害者との示談交渉を進める上でも有効なためです。

一方、製造業者に対する証拠収集は充分ではないが、侵害についての確実な情報を有しているか、または多数の販売者が密集している場合(例えばソウルの梨泰院、南大門市場等の多くの店舗で侵害物品が販売される場合)には、捜査機関に情報を流し、急襲できるように証拠物及び侵害者の居所をつかむことがより効果的です。

2. 関連官庁への救済申請

イ.特 許 庁

不正競争防止法に違反する商品や偽造商品が発見された場合には、特許庁管理局調査課、またはその監督下にある偽造商品申告センターに申告して、救済を受けることができます。更に、場合によっては、発明振興法と同施行令に基いて特許庁内に設立された産業財産権紛争調停委員会(1995年1月6日から運営)に調停申請して、審判とか裁判に代わる迅速かつ経済的な紛争解決を図ることもできます。

ロ.関 税 庁

商標権または著作権侵害物品が輸出入されるという情報が入手された場合、関税庁情報第一担当官室に申告して、侵害物品の輸出入免許を保留する等、通関過程で知的財産権保護を受けることができます。

(3)民事訴訟手続

1. 仮処分申請

侵害者が、警告状の発送にも拘らず侵害を中断せずにその侵害が継続して行われ、権利者が莫大な損害を被るような場合、その権利者は、侵害者を相手に侵害差止仮処分申請を提起することができます。一般的には刑事告訴と共に仮処分申請を提起すれば、侵害差止の実効性が高くなります。知的財産権に関する侵害差止仮処分申請の場合、韓国法院では、通常、審問期日を指定して当事者の主張と疏明資料を検討した後、仮処分決定を下します。仮処分申請のときから仮処分決定が下されるまでの期間は、各事案によって異なりますが、普通、2ケ月から6ケ月です。特許権係争事件の場合、相手側が特許庁に権利範囲確認審判とか無効審判を提起すると、特許庁の審決が下されるまで、法院が仮処分の決定を保留する場合もあります。法院が仮処分を認める決定を下す場合には、相手側の損害を保証するための供託金を納入するように命令します。

仮処分の執行は、その仮処分決定の告示を受けた後、14日以内にしなければ仮処分決定の効力が失われるので、執行期間に常に留意しなければなりません。

2. 仮差押え申請及び本案訴訟の提起

権利者が、侵害行為によって相当な財産上の損害を被ったり信用を失ったと考え、侵害者に対する損害賠償を望む場合、権利者は侵害者を相手に侵害差止、損害賠償及び信用回復に必要な措置を請求することができます。更に、侵害者が権利者からの損害賠償請求があることを予想して、自身の財産を隠匿するか処分する可能性が高いと判断される場合には、権利者は侵害者の財産を事前に調査して、不動産または動産等を仮差押えしておく必要があります。仮差押えの場合には、審問なくして法院の決定が下されるか仮処分の場合のように供託命令が下されます。侵害者に対する損害賠償請求は、権利者の損害額または侵害者のあげた利益の額の立証が難しく、それによって訴訟期間が長びく場合が多く、本案訴訟までいく例は少ないのです。通常、警告状の発送または刑事告訴の段階で侵害者との示談が成立することが多いといえます。

(4)その他、侵害防止対策

上述のように、侵害者に対して法的措置を取って侵害を差止めた以降も、また他の侵害行為を防止するための措置を取る必要があります。侵害者との示談をする場合には、その示談書の内容にその後再び侵害行為があった場合、莫大な損害賠償額の支払いを求める文言を挿入することで、将来の侵害行為を間接的に予防する効果を有することができ(再侵害時損害賠償の本案訴訟を経なくとも示談書のみによって約定金請求が可能であるので)、一方、第三者の侵害行為を防止する方法としては、国内日刊紙または業界誌等に侵害者による謝罪文を掲載するとか、侵害物品の供給を受け販売した業者に対して夫々通知文を送って、今後は侵害物品を取扱わないように勧告する措置を取ることも効果的です。

 


4.知的財産権侵害事件における日本企業の対応例

1. キャラクター玩具(著作権・商標権及び商品化権侵害)

〈ケース〉

映像著作物に登場するキャラクターに対する著作権を日本のA社が、そのキャラクターに対する商品化権及び韓国で玩具類に対する商標権を日本のB社が有している状況で、韓国のある玩具会社が上記キャラクターを複製した登録商標を取付けた玩具を製造販売した。

日本のA社の著作権とB社の商品化権及び商標権を侵害した製品が、韓国で製造販売されているという情報を入手した日本のA社とB社は、各社の職員等を韓国に派遣して侵害品の販売状況を調査し、証拠を収集しました。侵害の証拠とするため、侵害品を購入するときには、簡易税金計算書または領収書を取付けておきました。

証拠品を収集して日本に持ち帰ったA社とB社は、日本の顧問弁護士に相談の上、その顧問弁護士と共に韓国の法律特許事務所を訪問して、その証拠品がA社の著作権及びB社の商標権を侵害したものであるという判断を受け、事件処理を依頼しました。

事件依頼を受けた韓国の法律特許事務所では、侵害者に関する情報とより確実な侵害証拠を確保するため、所内で調査チームを組織して侵害者の事務所及び工場住所と侵害者の代表者名等を確認して、侵害品が積まれている現場及び運搬の様子等を写真に撮ってきました。必要な情報と証拠を確保した上で、韓国の侵害者であるY社を相手に、商標権及び著作権侵害差止仮処分申請を提起する一方、管轄検察庁に刑事告訴状を提出しました。

日本の顧問弁護士は、日本のA社の著作物が、1957年10月1日以後の作品であるという事実を立証できる書類、真正品と侵害品を対比する写真及び比較表等を作成して韓国の法律特許事務所に送付する等、多くの支援を行いました。

韓国の弁護士は、日本のA、B社の代理人として検察庁で原告陳述を行い、必要資料及び証拠を提出する等により被告の有罪を主張する一方、後日の損害賠償等の民事訴訟に備え、捜査機関を使って被告の経理帳簿等を押収して侵害品の製造販売の期間、数量、価格及び販売所等を正確に調査するよう当局に要請しました。
更に、侵害の再発を防止するために侵害品製造に利用された金型等製造機器を押収することも併せて要請しました。

被告であるY社の代表者を調査した検察庁では、Y社が製造販売した製品が、日本のA社の著作権とB社の商標権を侵害したものと判断して、Y社の代表者を拘束、起訴しました。拘束されたY社の代表者は代理人を送って示談を求め、韓国の国際法律特許事務所が、日本の顧問弁護士に連絡し、示談の可否を問い、結局、韓国のY社とは、

 

1)今後二度と侵害しないという覚書の提出
2)当該金型及び在庫品の引渡
3)損害賠償金の支払い
4)謝罪広告の掲載

を条件に合意しました。一方、同示談内容において、日本のA、B社は仮処分申請を取下げることにしましたが、キャラクター複製が著作権侵害に該当するという韓国の判例を得るべく、著作権法違反の点は提訴を取り下げないことにしました。これは、Y社の代表に対して既に刑事提起されているにも関らず、著作権法違反が親告罪にあたる関係からもし告訴を取り下げてしまうと法院はキャラクター複製が著作権侵害に該当するとの判決を行わずに、公訴棄却判決という形式的裁判を行い、有罪判決が宣告されなくなってしまうからです。

結局、Y社の代表は、上記合意をすることで保釈決定で釈放され、執行猶予が付された懲役刑の有罪判決を受けました。一方、日本のA,B社はY社より受けた損害賠償金で、日刊新聞及び玩具業界発行の月刊誌に謝罪文を掲載することで、他の侵害者に対する警鐘を鳴らし、事件を完全に終結させました。

2. 衣類製品(商標権侵害)

〈ケース〉

日本のC社の商標権を侵害した衣類製品が、韓国の特定地域の多くの店舗で大量に販売された。

韓国の特定地域の市場にある多くの店舗で、登録商標の付いた衣類製品が、大量に販売されているという情報を入手した日本のC社は、韓国の独占輸入販売会社に、まず市場調査をするように求めた後、韓国の法律特許事務所を訪問して、侵害防止のため効果的な対策を相談しました。日本のC社が入手した情報は、韓国市場で侵害品が販売されているということだけでしたし、製造業者に関する情報、その他、何ら侵害の証拠も入手していませんでした。
韓国の特許法律事務所では、このように、侵害品販売者が十数ケ所を超える事案の場合、各販売者等に対する人的情報や物的証拠を全部確保して、全ての販売者等を刑事告訴したり、または警告状を送るのは余り効果がないと判断して、捜査機関に情報を提供して認知捜査をする方法を代りに提案しました。

韓国の法律特許事務所では、所内で編成した調査チームを市場に送り込み、侵害品を販売する店舗の商号及び代表者名を記載した目録を作成して、一部店舗では侵害品を購入して、簡易領収書を確保する等証拠を集めました。侵害品を取扱う店舗では、取締りに備えて常に警戒を弛めないでいました。一般人が品物を購入しても、簡易税金計算書とか領収書等は殆ど発給しないので、侵害調査と証拠収集に多くの困難がありました。法律特許事務所の弁護士は、その後、管轄検察庁を訪問し、一切の資料と証拠を引渡して、販売者等に対する一斉取締りの特別要請をしました。

検察庁では、取締チームを構成、侵害品販売店舗を急襲して侵害品等を押収し、侵害の軽重により数十名の販売者等を起訴しました。検察庁の調査によっても、結局、製造業者までは明らかにできませんでしたが、日本のC社の商標侵害品の販売は、著しく減少しました。

3. 看板(商号の侵害)

〈ケース〉

韓国のコ−ヒ−ショップの看板に、日本の有名企業の商号を無断使用した。

韓国のコ−ヒ−ショップの看板、内装、マッチ、販売宣伝物に日本の有名企業の商号が無断使用されていることを発見した当該日本企業は、当該商号が、指定サ−ビス業として登録はしていないが、韓国で多数の商品区分類に商標登録がなされている周知・著名商標(商号)であることを理由に、その使用を止めさせるべく韓国の特許法律事務所に相談してきました。

依頼を受けた同事務所では、日本企業の商号(商標)は、国内に広く知れ渡っており、韓国のコ−ヒ−ショップで看板などに使用しており、商標(サ−ビスマ−ク)的使用がされていると判断して、不正競争防止法に違反するとの結論を出しました。その上で、当該コ−ヒ−ショップ代表者に対し、標章の使用を直ちに中止すべき旨の警告状を出状しました。

警告状を受けとったコ−ヒ−ショップの代表は、法律特許事務所を訪問し、「法律を知らなかった」と謝罪しました。そこで、念書を出してもらい、問題の標章を全て取り外させることで、事件は落着しました。

4. 漫画(著作権侵害)

〈ケース〉

韓国Y出版社が、日本の有名漫画家の漫画を韓国語に翻訳して出版した。

著作権委託管理団体である日本のE社は、同社が管理する漫画が韓国で複製されているという情報を得て、日本の専門弁護士を通じて、韓国の法律特許事務所に侵害防止のための措置を依頼しました。同事務所は、書店で複製品を購入した上で、韓国のY出版社に警告状を送り、

1)印刷、出版、販売等、複製行為を即刻中止すること
2)出版部数、販売量、在庫量等を記載した経緯書及び今後侵害しないという覚書を提出すること
3)一定額の損害賠償をすること
4)謝罪広告を掲載すること

等を要求しながら、一定期間内にその条件等が履行されないときには、刑事告訴及びその他民事上の措置を取るという趣旨を伝えました。
その警告状を受けたY出版社の代表は、事務所を訪れ、全ての条件に応じました。結局、在庫品を引き取って廃棄し、十分な損害賠償金の支払いを受けて、謝罪広告文まで掲載した後、事件が終結しました。

5. 電気製品(特許権侵害)

〈ケース〉

日本のF社が韓国で特許権を有するスイッチを韓国のZ社が製造販売した。

日本のF社は、韓国のZ社の製造販売する電気部品(スイッチ)がF社の韓国での特許権を侵害しているとみて、韓国の法律事務所に相談しました。同事務所では、当該製品及び関連資料を検討した結果、特許侵害に該当するという結論を下し、韓国Z社に対し、特許侵害を即刻止めるよう求める警告状を発送すると共に、特許権による侵害差止仮処分申請と刑事告訴を同時に提起しました。

韓国法院による仮処分決定は検察庁に回され、拘束等の刑事処罰が迫ったことを感じた韓国Z社は、示談を持ちかけてきました。

結局、日本のF社は、韓国のZ社が、当該製品を製造販売しないこと、日刊新聞に謝罪広告を掲載すること、損害賠償を支払うこと等を主な内容として合意し、韓国のZ社に対する刑事告訴を取り下げることで事件が結了しました。

 


5. 国境(税関)での取締り

1994年1月1日から施行されている改正関税法及びそれに伴う関税庁告示に基き、税関における知的財産権侵害物品についての取締権限が、公的に与えられました。
その概要は以下の通りです。

1. 商標権及び著作権侵害物品の輸出入の禁止

改正関税法は知的財産権の保護に関する規定を新設し、商標法に基き登録した商標権または著作権法が定める著作権を侵害する物品は、輸出入できないようにしています(関税法第146条の2)。

その具体的な手続は、同法第146条の2の各項、同法施行令第127条の4乃至第127条の11及び『知的財産権の保護のための輸出入通関事務処理規程(関税庁告示第94−857号、第94−884号、第95−913号、及び第95−943号)』(以下「関税庁告示」といいます)で定めるところによります。その内容は次のとおりです。

2.商標権の届出

商標法に基く商標を登録した者のうち、商標権を侵害する物品の輸出入から保護を受けようとする者は、税関長に別紙の様式により(申告書3部及び商標登録原簿謄本)、以下の内容で商標権の届出を行うことができます。また最初に届け出た税関以外の税関にも同届出をしようとする場合には、最初の税関への届出の際、該当書類を追加して提出できます。

(1)商標権を用いる権利者
(2)商標権の内容、範囲
(3)商標権を侵害される可能性のある輸出入者または輸出入国
(4)商標権の侵害事実を確認するための次の事項
イ.外国での商標権保有現況
ロ.外国の商標権者と国内専用使用権者との関係
ハ.外国の商標権者と国内商標権者との関係
ニ.外国での商標使用権許諾現況
ホ.国内専用使用権者が当該商標が付いた物品を輸入販売するか否か、及び輸入物品の明細
ヘ.国内外の商標権者及び商標使用の許諾を受けた者の製造会社目録(名称、所在地、製造物品の明細等)
(5)その他商標権の侵害事実を確認するために必要な事項

商標権の税関への届出の有効期間は10年ですが、商標権の権利期間が10年以内に満了するときは、権利期間の満了の日までとします(関税庁告示第2−2条)。税関長は、輸出入の届出が行われた物品が届出られていた商標権を侵害する恐れがあると認定する場合には、商標権届出人に当該物品の輸出入申告事実を通報しなければならず、輸出入申告者には当該物品が商標権届出人の要請により輸出入免許が保留されることになる旨を通報します。商標権届出人は、この通報を受けた日から10日以内に税関長に担保物を提供し、輸出入免許の保留を申請することができます。税関長は、この要請を受けて、輸出入物品が届け出られた商標権を侵害したと認定できる場合には、当該物品の輸出入免許を保留します。但し、偽造商品であるのが明白な場合には、保留要請がなくても、当該物品の輸出入免許を保留することができます。(関税庁告示第2−3条)。一方、著作権については、届出に関する規定は見当たりません。

3.輸出入免許の保留

商標権及び著作権の利害関係人(関税庁告示第1−3条の定義によれば、商標権者、その専用使用権者及び著作権者のこと)は、知的財産権侵害物品の輸出入免許保留要請書(別紙様式)及び正当の権利者たるを証明する書類と共に、国内搬入もしくは輸出届出予定の20日前に、当該輸出入物品の通関予定地の税関長に対し、輸出入免許の保留要請を行わなければなりません。同保留要請書の記載事項は、以下の通りです(関税庁告示第3−1条)。

(1)品名、輸出入者、輸出入国
(2)知的財産権の内容、範囲
保留要請書に添付すべき書類は次の通りです。
イ.商標登録原簿謄本(著作権の場合、当該権利の発生を証明する資料)
ロ.輸出入予定物品が知的財産権を侵害したと認定する程の説明書及び参考資料(写真、カタログ、サンプル等)
ニ.担保提供書

上記保留要請は、担保として当該物品の課税価額の100分の120に相当する金額を金銭で税関長に提供しなければなりません。関税庁による輸出入免許の保留の期間は、保留要請人が保留事実の通知を受けた後、10日間です。同期間内に裁判所への提訴事実を立証するとき、又は、関税庁による輸出入免許の保留をそのまま継続するようにする法院の仮処分決定事実を通報した場合には、保留を続けることができます。さらに、止むを得ざる事由によって、10日以内に裁判所へ提訴せず、保留の最終日以前に税関長へ輸出入免許の保留期間延長の要請をする場合には、この10日間の立証期間を延長することができます。

当該輸出入免許の保留から関税庁とは関わりなしに独自に法院の仮処分決定により施行されたり、又、関税庁により保留された状態でさらに法院の仮処分決定により継続される場合、輸出入免許の保留期間は、法院で仮処分期間を明示する時にはその最終日まで、期間を明示しない場合には仮処分開始日より31日間です。

4.輸出入免許許容の要請

輸出入者は、通関が保留された物品について、正当の権利関係を立証する資料の提出と輸出入免許の保留要請人が提供する金額に100分の25を加えた金額を担保として税関長に提供し、輸出入免許の許容を要請することができます(関税庁告示第4−1条)。

5.商標権における真正商品並行輸入許容

国内の商標権者または専用使用権者の許諾なしに同一の商標が付けられた真正商品の並行輸入が1995年11月6日から認められています。それ以前から、真正商品の並行輸入の問題は論議されてきましたが、関税庁は、“知的財産権保護のための輸出入通関事務処理規程”を改正告示(1995年11月3日付、関税庁告示第95−943号)して、並行輸入の許容基準を設けました。即ち、外国で適法に使用することができる権利を有する者によって、輸入申告された物品に商標が付され、国内外の商標権者が次に該当する時には、商標権を侵害しないものとみて並行輸入を許容することとしたのです。

国内外の商標権者が同一人、又は系列会社関係(株式の30%以上を所有し、かつ最多出資者である場合)、輸入代理店関係等により同一人とみることができる関係があるとき。

外国の商標権者と上記の関係にある国内商標権者から専用使用権の設定を受けた場合。(但し、国内の専用使用権者が、当該商標が付された物品を製造・販売のみをするときは、国内の専用使用権者と外国の商標権者が同一人の場合、又は同一人とみることができる関係にある場合に限ります。)

しかし、上記のような並行輸入の許容は,単なる行政令に該当する「告示」によって許されているにすぎないので、ある商標の付された製品の輸入が国内の商標権を侵害するか否かについては、裁判所の判断を仰ぐことになると思われます。



(C)1999東京海上火災保険株式会社

 

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