新型コロナウイルス療養施設と建築基準法における用途変更について

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2020/7/16

 東京都をはじめ多数の自治体が、ホテル事業者等の宿泊施設一括借り上げを行うなどして、その施設を新型コロナウイルス無症状者及び軽症者を療養するための臨時の医療施設(以下、軽症者療養施設といいます。)として利用可能な状況にあります(※1)。事業者の立場からしても、社会的な意義に加え、下記グラフのようにインバウンドの旅行者のみならず国内旅行者も減少する中(※2)、低稼働となったホテルの有効活用という観点でも優れた施策であるといえます。この状況について、建築基準法(以下、建基法といいます。)の用途変更の観点から解説いたします。


 軽症者療養施設については、新型インフルエンザ等対策特別措置法(以下、特措法といいます。)第48条第4項及び建基法第85条第1項または第87条の3第1項の規定により、緊急事態宣言が発令された日からひと月以内に工事等に着手する場合には、建基法の規定は適用しないとされています。建基法第85条第1項及び第87条の3第1項には、ただし書きがありますが、防火地域内に建築する場合はこの限りではないという点に注意が必要となります。

 防火地域内のホテルについて考えると、ホテルを軽症者療養施設とする場合には、建基法第87条第1項に記載がある用途変更申請の要否を確認する必要があります。用途変更の要否については、一部自治体ではお知らせ※3を掲載し、当分の間は用途変更申請を不要と判断していることが確認できます。しかしながら、未掲載の自治体も多く、その場合は都度確認する必要があります。第2波、3波が懸念されており、無症状者及び軽症者以外の患者を療養する施設が必要となった場合に、その施設用途が病院と判断される可能性は否定できず、その場合は用途変更申請が必要となります。申請時には建基法やその関係規定とされている消防法などについて、審査されることとなります。

 一般に用途変更申請を行う場合には、
  ・既存建築物の法適合状況の確認
  ・既存不適格部分の確認及び既存不適格調書の作成
  ・既存遡及部分の確認と工事方法の検討
  ・用途変更申請図面等の作成
を始めとした様々な確認や図面作成を行うこととなり、通常は手続き含め1カ月以上を要します。この作業を緊急時に行うことは、行政・指定確認検査機関窓口の縮小やテレワークにより必要書類をそろえることができない、専門家による現地確認ができない等の障害が発生する可能性が高く、困難であることが想定されます。

 そのため、対応可能な時期に
  ・新築、増築時等の確認申請書類の保存及びデータ化
  ・改修部分の図面の保存または作成及びデータ化
  ・既存不適格部分の確認
を行うことは、第2波、3波に備えることはもとより、建築物の遵法性を保つこと及び弾力性を高める点において、有意義なものであると考えます。

 建築物は利用者にとって使いやすい間取りに変更されるなどして、結果的に建基法や消防法などについて、遵法性が確保できていない状況になっていることが多々あります。遵法性が確認できない建築物は、不動産の売買やそれに伴う金融機関からの融資を受けるに当たって、マイナス評価されることや、融資額の低減等のリスクを保有することとなります。また、火災等有事が生じた際に人命や周辺へ被害を生じさせた場合には、社会的責任を問われ企業価値失墜の可能性があります。一方で、遵法性が確保されている建築物は、取引や増築・用途変更の手続きがスムーズな傾向にあります。そのため、遵法性を保つことはこれらのリスクを回避することにつながると共に、建築物の価値を高めることになります。

 企業活動の上でコンプライアンスやCSRの重要性が認識されている今、改めて建築物の遵法性とその重要性を確認する機会にしてみてはいかがでしょうか?

 

 

※1:厚生労働省 新型コロナウイルス感染症の軽症者等に係る宿泊療養のための宿泊施設の確保状況
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/newpage_00019.html

※2:観光庁 宿泊旅行統計調査(令和2年3月・第2次速報、令和2年4月・第1次速報)
https://www.mlit.go.jp/kankocho/siryou/toukei/shukuhakutoukei.html

※3:兵庫県建築基準法の施行について内の新型コロナウイルス感染症対策として開設される医療施設等の建築基準法の適用について
https://web.pref.hyogo.lg.jp/ks29/documents/coronairyoshisetu.pdf

参考:建築基準法
https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=325AC0000000201

参考:新型インフルエンザ等対策特別措置法
https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=424AC0000000031

執筆コンサルタントプロフィール

山田 佑樹 
不動産リスクソリューション本部 研究員

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