企業人権ベンチマークの最新メソドロジーが公表されました

  • コンプライアンス
  • 経営・マネジメント
  • 人事労務

2021/10/20

 企業の人権に関する取組を公開情報に基づいて評価し、2017年から評価結果を公表している企業人権ベンチマーク(Corporate Human Rights Benchmark:以下、「CHRB」※1)は、2022年および2023年の評価で適用される最新メソドロジー(※2)を、2021年9月30日に公表しました。

 現時点でCHRBが評価対象とするのは5業種(農作物、アパレル、資源採掘、ICT関連製造業、自動車産業)であり、2020年には世界の時価総額上位企業の中から229社が選定されました(※3)。2022年以降の評価における主な変更点として、以下の二点が注目されます。

 一つ目は、評価サイクルの変更です。CHRBは今後も毎年ベンチマークを公表しますが、2022年からはセクター間のローテーションが開始され、各セクターの対象企業は隔年で評価を受けることになります。2022年は農作物、ICT関連製造業、自動車産業が、2023年はアパレルおよび資源採掘セクターが評価される予定です。これにより、企業は評価サイクルの間に、改善し開示内容を増やすための時間を確保でき、投資家などステークホルダーは次の評価サイクルまでに、企業と対話して改善を要求し、改善が実施されたかどうかを確認する時間が増えるとCHRBは説明しています。

 二つ目は、測定テーマの重み付けの変更です。2020年の評価では、6つのテーマ(※4)が設定されていましたが、最新メソドロジーでは「F.透明性」が削除され、代わりに、「C.救済と苦情処理メカニズム」および「D.パフォーマンス:人権に関する取組」の全体スコアにおける重み付けが、それぞれ5%ずつ増加しました。例えば、企業のパフォーマンスへの注目度をさらに高めることを目的として、指標D.1.6b(サプライチェーンにおける結社の自由と団体交渉権の尊重)では、企業がサプライヤーとの契約上の取り決めやサプライヤーの行動規範に、結社の自由や団体交渉権に関する要求事項を盛り込んでいること、また、要求事項をサプライヤーが実施するために企業がサプライヤーと協力していることが得点を取るための必須要素になりました。さらに、同指標で満点を獲得するためには、企業がサプライチェーン上で結社の自由または団体交渉権の制限により影響を受ける人数に関する評価と、その進捗状況の分析を行うことが必要になりました。

 このように、評価サイクルの変更によって企業はステークホルダーから人権課題の改善実施を今まで以上に強く要請されることが予想されるほか、CHRBの評価においては、人権尊重のための企業の具体的な取組が今後より明確に評価される予定です。

 なお、2020年にCHRBの評価対象となった日本企業は27社でしたが、上述の通り、評価では企業がサプライチェーン全体にわたって人権尊重の取組を実施することが求められるため、多くの企業にとっては顧客から人権尊重に関する取組の強化を今後より一層求められる可能性があります。そのため、企業におかれては、CHRBの最新メソドロジーや評価結果、先進企業の取組などを参考にしながら、人権を尊重する経営を主体的に進めることが望ましいと言えるでしょう。

 

※1 イギリスの保険会社Aviva Investors等の機関投資家、ESG評価機関、NGO等が参画する国際的なイニシアチブ。

※2 “The Methodology for the 2022–2023 Corporate Human Rights Benchmark”
   https://www.worldbenchmarkingalliance.org/research/the-methodology-for-the-2022-corporate-human-rights-benchmark/

※3 企業人権ベンチマークの2020年の結果については、リスクマネジメント最前線「企業に求められる人権リスク対策②」を参照のこと。
   https://www.tokiorisk.co.jp/publication/report/riskmanagement/pdf/pdf-riskmanagement-348.pdf

※4 2020年のCHRB測定テーマと重み付けは以下の通り。
   A. ガバナンスと方針によるコミットメント 10%
   B. 人権尊重と人権デュー・ディリジェンスの組み込み 25%
   C. 救済と苦情処理メカニズム 15%(最新メソドロジーでは20%に増加)
   D. パフォーマンス:人権に関する取組 20%(最新メソドロジーでは25%に増加)
   E. パフォーマンス:深刻な申立てへの対応 20%
   F. 透明性 10%

   

 

 

 

 

執筆コンサルタントプロフィール

谷口 繭
製品安全・環境本部 シニアコンサルタント

コンサルタントの詳細

コンサルタント紹介を見る

メールマガジンを申し込む

コラムトップへ戻る