「2025年の崖」まであと3年:DX人材育成にかかる課題とは?

  • 人事労務

2022/6/1

「DXレポート」(2018年、経済産業省発行)で話題となった「2025年の崖」※1まであと3年となった2022年4月1日、経済産業省と独立行政法人情報処理推進機構(IPA)は、デジタル人材育成支援を目的として、ポータルサイト「マナビDX」を開設しました※2。こうした民間企業に対する省庁のDX人材育成支援の加速化に代表されるように、DX人材育成の推進は企業の皆様にとって急務の課題となっていると思いますが、ここ数年の調査により人材育成にかかる課題も浮き彫りになってきました。そこで、本コラムでは、IPA等の調査により指摘されたDX人材育成における課題をもとに、DX人材育成の論点を考察してみます。

 まず、DX推進に関して過去3年間に実施された調査のなかから、特に「必要とされている人材」「学習機会」に関して報告された結果を一部ご紹介します(下表参照※3)。

 上記は、これまでの調査結果のごく一部であり、各企業の課題の全容を網羅的に示すものではありませんが、傾向として以下の2点が今後のDX人材育成の課題になる可能性を示唆しているものと思われます。

1.DX推進企業においては、DXを主導するリーダー(プロダクトマネージャー、ビジネスデザイナー)の育成が必要とされている。

前述の各調査報告では、多くの企業が以下2種のDX人材の強化・育成が今後ますます必要であると回答しています※4

  • プロダクトマネージャー:DXやデジタルビジネスの実現を主導するリーダー格の人材。DX戦略立案・方針策定・推進、体制構築、予算統制などを担うため、デジタルテクノロジー、ビジネスプロセス、マネジメントといった幅広いスキルを持つ人材。
  • ビジネスデザイナー:DXやデジタルビジネス(マーケティング含む)の企画・立案・推進などを担う人材。プロダクトマネージャー同様、技術領域とビジネス領域の両方に明るい人材が望ましいが、特にビジネス領域に精通し新たなビジネスの発想力のある人材。

 これらの人材には、いずれも従来のIT技術者に求められてきたような深いテクノロジーに関する知識というよりは、ビジネスプロセスに関するスキルが強く要求されます。そのため、座学や自己学習のみでスキルを獲得することが難しく、具体的な案件実施を通じてOJTで習熟することを目指すのが望ましいと考えます。

2.DX推進において人材育成が重要であるという声がある一方で、具体的な学習機会が十分でない可能性がある。

 DXに限らず、企業における人材育成の手法は、大きくOff-JT(座学、オンライン研修、ワークショップ、ケーススタディ等)、OJT、自己学習の3種類にわけられます。冒頭でご紹介した「マナビDX」は、このうちOff-JTあるいは自己学習をサポートするものですが、自前の教材による学習機会の提供が難しい場合は、こうした公表されているコンテンツを活用することも有効だと思われます。

 一方、特に1.に記載した人材を育成するにあたっては、OJTが重要な促進剤になる可能性が高いと思われます。具体的に新しいスキルを活かせる案件が不足しているといった状況も報告されていますが(上表参照)、例えば手元にこれまでの業務の中で蓄積されたデータなどが存在しているのであれば、データ活用に関するプロジェクトをまず立ち上げてみることが肝要かもしれません。

 直近のIPAによる調査でも、先端領域に関する業務従事を通じてスキル向上や新たなスキルの獲得が促進されたとの報告がなされており※5、今後企業においては人材を評価・発掘するとともに、社内外のサービス・コンテンツ利用も含めて、活躍するチャンスを人材に付与していく取組みが求められます。

 

※1 経済産業省は、デジタルトランスフォーメーションに向けた研究会(平成30年度)の検討結果として「DXレポート~ITシステム『2025年の崖』の克服とDXの本格的な展開~」を公開し、その中でDX推進が困難な状況を克服しない限り2025年以降大規模な経済損失が生じる可能性があるとの見解を示しました。このリスク認識が「2025年の崖」と呼ばれています。

※2 経済産業省「デジタル人材育成プラットフォーム『マナビDX』を開設しました!」(2020年3月29日)参照。

※3 各出典の内容をもとに、弊社抜粋・要約のうえ作成。

※4 DX人材の定義や役割については、IPA「デジタル・トランスフォーメーション推進に向けた企業とIT人材の実態調査」(2020年5月)などをもとに弊社にて記載。

※5 IPA「デジタル時代のスキル変革等に関する調査(2021年度)」(2022年4月)。

執筆コンサルタントプロフィール

山下 幸樹
製品安全・環境本部 マネージャー

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